学会の会員でもある岩立広子さんが主宰する「岩立フォークテキスタイルミュージアム」とのコラボ企画が2023年1月26日十数名の学会員の参加で開催されました。
※ 岩立フォークテキスタイルミュージアム (iwatate-hiroko.com)
「衣の造形」部会の第1回企画です。
岩立広子(いわたてひろこ)さんは当学会山本会長とも古くからの知己でありインドの染織についての日本での第一人者です。
50年以上にわたり85回の訪印によるインドの染織調査を行い、収集した布類は4000点(ミュージアム所蔵品)にも及びます。インド以外のペールやチベットなどの布類も4000点あり、2009年に開設された「岩立フォークテキスタイルミュージアム」は小さな個人美術館ですが貴重な世界の布類を沢山所蔵し見ることができます。
この小さな美術館はガラス越しでは無く目の前で直接貴重な古布類を見ることができることをコンセプトとしています。
ミュージアムホームページ「館長あいさつ」には下記記載があります。
「大学では染織を選び工芸科に進んだものの将来は不安でしたが、旅で見つけた布を追い求め、それが生涯の仕事に繋がりました。…集め始めた時代はインドも、その周辺国もまだ貧しく、本当の手仕事が日常に見られる最後の時代でした。
私の手元に引き寄せられた布たちは、厳しい工業化の波をくぐり抜けて生き延びた、本当に貴重な財産です。自分の目と足と世界中の人々に支えられた美術館です。」
岩立さんの2冊のインド染織に関する著作、「インド 砂漠の民と美(用美社)」「インド 大地の布(求龍堂)」は日本語で書かれた数少ないインドの染織を網羅した本です。これを見れば岩立さんのコレクションがいかに素晴らしいかわかります。
掲載されている布や衣裳の素晴らしさに加えて、それを作った人達の生活風景の写真、訪れた時の話などを読むとインドの人達の暮らしに思いを馳せることができます。
高齢な岩立さんのお話を直接聞く機会はなかなか無いのですが、今回は特別にお願いし1時間半近く展示品の説明に加えインドに行き始めた頃からの話しも伺うことができました。
企画の前に山本会長と担当の私で岩立さんにお話を伺いましたが、個人美術館の運営がいかに困難であるかがよくわかりました。
辺鄙な地まで探しに行くこと自体大変なわけですが、そこで手にしたものを保管・管理することの大変さが良くわかりました。収蔵品は8千点を上るわけですから。
多くの人達に見てもらいたいと開いた小さな美術館も「開館以来、赤字続き」だったとのこと。コロナ禍によりさらに維持し続けるのが厳しくなりました。それでも多くの人達に見てもらいたいと12年間続けてきたことに敬意を表します。
残念ながら美術館は現在一般公開休止中ですが、アジア民族造形学会としても岩立広子さんの活動と美術館の支援を今後も行っていきたいと思っています。
「衣の造形」部会はアジアの染織に関する次の企画も準備中です。今後も部会としての活動を続けて行く予定です。
(「衣の造形」部会 相葉康之)
参考:岩立広子さん著書
どちらも岩立フォークテキスタイルミュージアムで購入可。送ってもらうこともできます。
現在一般公開は休止中です。
◎一般財団法人 岩立フォーク テキスタイル ミュージアム
〒152-0035 東京都目黒区自由が丘1-25-13岩立ビル3F
◎「インド 大地の布―岩立広子コレクション」
著者:岩立 広子
出版社:求龍堂
発売日:2007/10/1
大型本:207ページ
定価:6,800円+税
◎「対話する布 ミュージアム活動の12年」
著者:岩立 広子
発行:岩立フォークテキスタイルミュージアム
発売日:2022/08/08
97ページ
定価:2,300円+税